医療法人 すがわら内科呼吸器科 苫小牧市,苫小牧駅,糸井駅 内科、アレルギー科、呼吸器内科

 

論文

2022年5月にCOPDに関する論文がBMC Pulmonary Medicine に掲載されました。

COPDにおける1秒量の経年変化と併存症またはインパルスオシロメトリーの関係について
【英語論文PDF】

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、タバコの長期吸入によって生じる肺疾患です。末梢気道が狭くなり、肺胞が破壊されて肺気腫になり、気流閉塞(息を素早く吐き出せない)が起こります。息を最後まで吐けないので次の呼吸ができず、息苦しさの原因になります。気流閉塞の程度はスパイロメトリー(呼吸機能検査)による1秒量(1秒間の呼気の量)の低下で評価されます。
COPDの臨床では、喫煙の中止が何より重要です。喫煙が原因なので禁煙しないで治療しても効果がありません。私たちは、喫煙を続けるCOPD患者の予後が不良で禁煙できれば改善があると実感してきました。私たちのデータでは喫煙していたCOPD患者の1秒量の変化率はマイナス66.2ml/年に対し、禁煙できたCOPD患者はマイナス5.7ml/年であり、禁煙は1秒量の低下を抑制していました。
COPD患者は同時に多くの併存症・合併症を持っています。肺炎、喘息、癌、心血管疾患について1秒量の変化率を検討しました。肺炎あるいは喘息の合併は1秒量の低下と関係がありました。また、観察開始時のインパルスオシロメトリー値と1秒量の経年低下の検討では、A X高値群で1秒量の低下が大きいことが分かりました。
COPDの予後を改善するには、肺炎の予防と喘息のコントロールが重要で、A X高値のCOPD患者は早期の治療強化が必要と考えました。


私たちはインパルスオシロメトリーによって咳喘息および気管支喘息患者を亜型に分類し、吸入ステロイド治療効果を比較検討し、結果を海外英文雑誌RespiratoryResearchに発表しました。

インパルスオシロメトリーによる咳喘息亜型と吸入ステロイド治療効果の比較

【英語論文PDF】

気管支喘息治療におけるインパルスオシロメトリーの有用性に関する後ろ向き研究

【英語論文PDF】

 長引く咳の原因として最も頻度の高い疾患が咳喘息です。咳喘息は、喘鳴や呼吸困難を伴わない咳だけが唯一の症状の喘息と定義され、呼吸機能が正常で、気管支拡張薬が多少効果があるが吸入ステロイドで改善します。 適切な吸入ステロイド治療がなされなければ呼吸困難を伴う典型的喘息に進行します。一方、気管支喘息は喘鳴と呼吸困難を伴い、呼吸機能が低下し、適切な治療がなければ死に至ります。咳喘息と気管支喘息は吸入ステロイドが最も重要な薬剤ですが、薬剤の選択に関する研究は少ない。
 インパルスオシロメトリーは口腔側から気管支方向に音響信号を送り、口腔内の気流と圧力により気道の呼吸抵抗を解析する検査です。スパイロメトリーとインパルスオシロメトリーの大きな違いは前者が努力性呼吸であるのに対して、後者は安静呼吸で簡便に計測できるので、小児や高齢者まで検査が可能です。 気道病変を気道抵抗として、中枢と末梢に分けて解析することが可能になり、喘息とCOPDの診断や治療効果の判定に有用とされています。
 私たちは、咳喘息および気管支喘息患者をインパルスオシロメトリーから、中枢気道抵抗が高い中枢(優位)型、末梢気道抵抗が高い末梢(優位)型、気道抵抗が正常な正常抵抗型に分類されることを見出しました。 喘息治療に多くの吸入ステロイド製剤が使用されていますが、治療効果の検討は十分にされていませんでした。 一般に、吸入ステロイド製剤の粒子径が小さいものは末梢に分布し、大きなものは中枢に分布することが知られています。
 当院を初診し、吸入ステロイドで治療された127例の咳喘息患者と108例の気管支喘息患者を観察研究しました。 各亜型に粒子径の異なる3種類の吸入ステロイドで治療し、治療効果を疾患特異的QOLスコアで比較しました。治療効果の解析では、中枢型は大きな粒子径の吸入ステロイドが最も効果的で、末梢型は小さな粒子径の吸入ステロイドが最も効果的でした。 これによって気道病変の局在と吸入ステロイドの粒子径が治療効果と相関があると示唆されました。 喘息には多様性があり、治療前のインパルスオシロメトリー検査による適切な吸入ステロイドの選択が重要であると考えています。